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脳卒中の種類
1)脳梗塞とは、脳に栄養や酸素を送っている血管、脳動脈がつまることによる病気です。一般に細い動脈がつまった場合には症状が軽く、太い動脈の場合には重症になります。そして、脳梗塞には2種類あり、一つは動脈硬化が原因の場合で脳血栓と呼び、もう一つは心房細動が原因となり心房内で固まった血液が動脈の血流に乗って脳動脈をつまらせる脳塞栓というものです。傷んだ脳の部位により、様々な症状が出現します。
2)脳出血とは、高血圧が原因で弱くなった比較的細い脳動脈から出血が起きて、脳の内部に血液が溜まる病気です。出血が止まらずに血腫が大きくなると意識障害を来たし死亡することになります。
3)くも膜下出血とは、脳の底のあたりの太い動脈が枝分かれする部分に動脈の瘤(動脈瘤、どうみゃくりゅう)ができ、その薄い壁が破裂して、くも膜下腔という脳の隙間に出血が広がる病気です。激しい頭痛を感じ、放置すれば再出血を起こして死亡することになります。

脳卒中を吉野川に例えて説明してみたいと思います。川の流れは長年のうちに、くねくねと蛇行してきます。曲がり角のあたりには、石ころや流木などが貯留します。これが血管であれば動脈硬化というものです。川の流れが激しければ土砂や流木が多くなり、川が蛇行し細いところや太いところが出来ます。脳動脈でも、よく似た現象が起きて、血管がせき止められれば脳梗塞で、破裂すれば脳出血、川の堤防しそうとする動脈の壁が傷めば脳動脈瘤、そして破れれば、くも膜下出血といったところです。すなわち、川の流れの激しさに相当するのが動脈では血圧ですので、高血圧症は動脈硬化の主因であり、3つの種類の脳卒中発症の引き金ともなります。
新年おめでとうございます。
令和5年、2023年が始まりました。
政治、経済、新型コロナと落ち着かない日々ではありますが、
若い人は明るい未来を目指して、私たち高齢者は日々を大切に
自分のできることを行い、みんなと協力して過ごしてまいりましょう。

かしはら診療所でも、みなさまと共に心身の健康を維持向上すべく
努力してまいりたいと思っています。

本年も、どうぞ宜しく御願いいたします。
開院して2年が経ちました
令和4年4月1日で、開院2年を迎えました。私も2歳年をとった訳ですが、今後も、マイペースを保ち、皆様の健康相談に応えられるよう精いっぱい頑張ります。お気軽に、電話や訪問いただきますように。
動脈硬化の進行を予防する方法について
はじめに
私は医師として動脈硬化の研究に従事し、動脈硬化の進行により生じた脳卒中の診療に従事してまいりました。その経験を通じて得た、動脈硬化性疾患を予防し健康長寿に至る方法について記述したいと思います。

動脈硬化に大きく関連する因子
1 年齢 年をとるということは基本的に何か、といわれると困りますが、年齢が動脈硬化に重要であることは疑いがありません。
2 高血圧 高血圧症自体が動脈硬化の結果であると言われればなんとも言いようがありませんが、高血圧症が降圧剤によって治療可能であるからには、高血圧が更に動脈硬化を助長する大きな要素でありますから、高血圧を治療することは重要となります。
3 糖尿病 糖尿病が動脈壁の粥状硬化を急速に進行させることが分かっています。また、糖尿病も治療可能な病気でありますので、糖尿病の予防と治療は重要です。
4 高脂血症 高コレステロールは、かつては肉食主体の欧米の疾患でありましたが、最近は我が国においても肉食が好まれるようになり高脂血症の人口が増加しています。私は若い頃、高コレステロールのウサギを用いて短期間で粥状硬化を作成して、その出来方を電子顕微鏡で観察いたしました。
5 精神的なストレス ストレスは、交感神経を興奮させ、様々な因子を介して血圧を上げ、血管を収縮させ、血液を固める方向へと誘導します。ストレスが持続することにより、動脈硬化が生じてしまうことになります。
6 遺伝 家系により、寿命が影響を受けていることは、皆様受け入れてくださるでしょう。理由については、現在進行中の遺伝子研究が徐々に明らかにしてくれるでしょう。

「理解を深める」ために
上記の動脈硬化因子についての理解を深め、具体的な行動に結びつけることが、動脈硬化を少しでも遅らせることにつながると考えます。結果的に年齢に比して若い体や頭脳を持ち、健康長寿を達成することになるでしょう。
若い頃には、化粧で美しく見せるのもよいでしょうが、中年以降は皮膚の下の健康の方が重要です。医学的なチェックを継続して、異常があれば可能な限り早めの対応を行いましょう。高血圧症、糖尿病、高脂血症、肥満、喫煙障害などは生活習慣病とも言われるように、その発病と進行に生活習慣が大きく関わっています。生活習慣を変えることには、自分の考えを修正することが出発点になります。自分の考えの問題点がしっかりと修正できれば、陽明学で「知行合一」といわれるように生活習慣を変え、生活習慣病の発病を防ぐことが可能となってきます。精神科や心理学でも「認知行動療法」といわれて、問題となる行動を変容する方法として確立されています。偏っている食習慣、運動不足、喫煙、いらいらする心理状態などを自分の個性だと間違って認識している方も多いのではないでしょうか。若い頃に元気で体力抜群、頭脳明晰であっても、その後もその状態が維持できるとは限りません。自分自身の現状を冷静に理解し、専門家に冷静な分析を依頼し、改めるべき生活習慣があれば修正し、新たに始めるべき生活習慣があれば、決断して取り組むことが、頭脳が若いことであり、肉体を若く保つ手法でもありましょう。

当院で行いたいアドバイス
私は、産業医として多くの方の検診データを拝見してきました。しかしながら、生活習慣を改善し検診データを正常な方向へと改善することが非常に難しいことを痛感しています。病気が重篤な局面に達してから、やっと生活習慣を変えるのは遅きに失するというよりは、大変もったいないことではないでしょうか。なぜなら、生活習慣を変える手法もあり、生活習慣は変えることが難しくても有効な薬はすでに開発されているのですから。
当診療所では、ひとりひとりの検診データ、検査画像、個性などに応じて、的確なアドバイスを行い、自ら健康長寿へと邁進していただけるように御援助できればと考えております。

頭痛について


1「死ぬ頭痛」と「治る頭痛」

死ぬ頭痛
今までに経験したことのない頭痛、意識状態に変化のある頭痛、悪化する頭痛などは生命に危険がある頭痛の可能性が高いので緊急で脳外科や神経内科のある病院を受診しましょう。
病名としては、
① くも膜下出血、動脈解離
② 脳内出血、脳室内出血
③ ヘルペス脳炎、髄膜炎
④ 脳腫瘍などの可能性があります。

治る頭痛
長期にわたって繰り返す頭痛には、
① 慢性頭痛(いわゆる頭痛もちの頭痛)として、3種類の頭痛があります。第一に筋緊張性頭痛、年配のかたの肩こりにともなう頭痛といってもよく、姿勢など生活習慣の改善が必要な場合が多くみうけられます。次に、若い人に多い片頭痛があります。仕事に支障を来たすようなことも多い、繰り返す強い頭痛ですが、トリプタンという特効薬が発売されています。前兆があったり、音や光に過敏になります。三つ目は、頻度は少ないですが群発頭痛という種類で中年の男性に多く、1ヶ月くらい頭痛発作を繰り返します。トリプタンの注射薬や酸素の吸入が改善効果を示します。
② 副鼻腔炎(蓄膿症)も頭痛の原因になります。耳鼻科で治療をして改善します。
③ 頸椎症や頚部の加齢にともなう後頭神経痛がありますが、整形外科やペインクリニックでブロック注射をすればたちまち改善します。ビタミンB12の静脈注射によっても効果が得られることもあります。

手遅れになると危険な頭痛
① 帯状疱疹、失神が顔面や後頭部に出ます。治療が遅れると頑固な神経痛を残します。急いで皮膚科で治療を受けましょう。
② 慢性硬膜下血腫、3ヶ月以内に頭部打撲のある方に生じますが、頭を打った記憶がない場合もあります。脳外科で簡単な手術をうけると治りますが、治療の遅れは寝たきりや死亡に至ることもあります。
③ 側頭動脈炎、側頭部の皮膚の血管が腫れて痛みます。内科でステロイドを内服して改善しますが、進行すると失明することがあります。
④ 緑内障、目のあたりが痛み、視野が狭くなります。手遅れでは失明してしまいます。
⑤ てんかん発作のあとで頭痛が残る場合があります。発作は自分では気がつかないことが多いので、様子がおかしく呼びかけに返事をしないような場合は、神経内科で診察をうけましょう。
⑥ うつ病も、頭が重くて元気がないという症状を示すことがあります。いろいろ調べても異常が見当たらない場合は、精神科でも相談するのがよいかもしれません。

頭痛の原因を調べるのに必要な検査
問診、視診、触診などの他に、診断を確実にするためには、
① 頭部(頚部)のCT、MRI検査
② 髄液検査(腰椎穿刺)、軽いくも膜下出血や髄膜炎、脳炎が疑わしい場合に行います。
③ 眼圧測定、脳波、血液検査、側頭動脈生検などが必要な場合もあります。
かかりつけの先生や頭痛外来で相談していただき、精密検査が必要と思われる場合はそれぞれの専門の先生に紹介していただきましょう。

2 最近増加している後頭神経痛について

後頭部周辺に数秒間出現する頭痛が最近増加していいます。繰り返し起こり、ズキッ、ジカッ、ザクッなど、結構強い痛みのため、患者さんは脳の病気でないのかと心配になり受診されます。片側に起きることが多いので、片頭痛ではないかと考えられる場合があります。
原因のほとんどは、肩こり、首こりによって首筋の筋肉や筋膜が硬くなり、その部位を通過している後頭神経(主に頭皮に分布する)が刺激されて痛みを生じることによります。しかしながら、まれには奥にある椎骨動脈の異常が原因となることもあるので、油断はできません。上部頸椎の異常が原因である場合も時にあります。
以前は、年配の方で、骨や筋肉が老化している状態が基盤にあり、急に力仕事や長時間の草取り作業などで神経痛が誘発されることが多かったのですが、最近は比較的若い年齢の方にも生じるようになっているようです。パソコンやスマホの長時間使用、肩周辺の運動不足、精神的なストレスなどが原因として重要になってきたのではないでしょうか。先日は、小学生が、この神経痛で受診したのには私も驚きました。
心配性の方には、椎骨動脈を調べるためにMRI検査を行うこともあります。症状から頸椎に問題があるようなら頸椎の検査を行います。
治療は、自然に改善することが多いので、原因の説明を行って様子をみることになります。痛みが強くて不眠になるようであれば、筋緊張を軽減する薬を夕食後に短期間服用していただきます。時折ですが、後頭神経科過敏状態になり、頭皮や頭髪に触れても異常な感覚を生じる場合もあり、過敏状態を改善する薬を用いる場合もあります。
肩こりの自覚がなくても、パソコン作業などの合間には、適宜休憩して肩や目の緊張をとるような体操などを行なうようにお勧めしています。

認知症


1 わたしの物忘れ人生、良いこともあります。

外来で診察をしていますと、70歳を過ぎた方々が受診されます。そうして、「最近、物忘れがひどいので、調べてほしい」とおっしゃいます。
ところが、わたしは小学生のころから物忘れが結構ありました。たとえば、休みの日にも学校へ通学して誰もいないのに驚いたり、また、帽子を被ったまま帽子を探し回ったり、簡単な漢字を忘れて100点を取り損ねたりしていました。その後も、暗記ものには苦労しています。いくつかの物を覚えるためには頭の文字を並べて呪文のようにしてみたり、忘れたものを思い出すのに「ああ、あい、あう、あえ・・・」と順に唱えてみたりしていました。最近は、その根気もなくなってきましたが・・。高校の時には、数学や物理の公式でさえ忘れてしまっていたので、時間をかけて公式を導いてから問題を解き始めるので、いつも時間が足りませんでした。そういう訳ですから、私は「覚えることに多大な時間をかけた結果」大学にも入学し、医師免許もいただいたという訳です。ですから、70歳を過ぎてから「物忘れが・・・」という方には少々腹立たしい感情を抱いてしまいます。
でも、物忘れの好いことも結構あります。人生、腹立たしいことにも出会いますが、少しすると殆ど忘れてしまい「何で腹がたったのか」分からなくなります。結果的に、腹立たしい時間が少なくてすみます。何かをやってやろうと大志を抱いても直に忘れるので努力をする必要がありません。人の名前や言われた用事を忘れるので、大きな期待を寄せられることもありません。そいうことで、自分の趣味に合った人生を歩みやすくなるのです。逆に、物を覚えすぎる人は、「あれもこれもしなければ」と、苦労がついてまわりやすいかもしれません。
以上、私の場合は若いころからの物忘れではありますが、一般の方では年配になってから物忘れを自覚することが多いのでしょう。物忘れは良いこともありますので、覚える仕事は若い人やコンピューターにまかせて、くよくよせずに御自分なりの物忘れ人生を楽しんでいただきたいと思います。

腰痛症


腰痛コルセットの功罪

腰痛の対策としてコルセットを着用している方は結構おいでると思います。腰痛と言えばコルセットと考える方々も多いことでしょう。今回は、コルセットはなぜ有効か、問題はないのかということを考えてみましょう。
まず初めに、コルセットには種類があるということをご説明します。手術や腰椎の骨折などの後で使用する硬性コルセット(場合によりギプス)は、腰椎の動きを厳しく制限する必要がある場合に入院中に用いられます。次に、硬い金属の支柱が数か所に入っている半硬性コルセット、腰をきっちりと締め付ける、昔西洋の貴族の女性が使ったようなダーメンコルセットなどは、退院後に生活をしながら腰椎の動きを制限しておく必要がある場合に用いられます。三つ目は、通常、腰痛などに際して使用され、スーパーマーケットなどでも売っているソフトコルセットや、幅の広いベルトのようなタイプのものです。
各タイプのコルセットは、それぞれの病気やケガの状態に適したものを用いる必要があるので、整形外科の先生と相談しながら使用する必要があり、このことは大変重要です。手術を要するような病態の患者さんがソフトコルセットを用いても全く効果が期待できないでしょう。詳しく神経症状を診察してもらいCTやMRIにて原因を検討すれば、手術をするかしないかに拘わらず、ただしいコルセット種類を選ぶことができるでしょう。
  よく患者さん達が話しているのを聞くと、「このコルセットはきついので幅を短くしてもらいたいとか、軟らかいものに変えて欲しい」というのがあります。御高齢の方の場合には、手術後の骨が癒合して安定するのには何カ月もの時間が必要です。あせりは禁物です。次に「コルセットが胸に当たって痛い」というのがあります。これは、背筋が伸ばされずに、コルセットにもたれかかる姿勢になっていることが原因である場合が多いようです。正しい姿勢をとっていただくか、コルセットを腰骨(腸骨)にしっかりと押し下げて装着していただければ胸を押さえて痛むことはないでしょう。時折「病院に来るときだけコルセットを着けている」とか、「病院にくるのでコルセットを外してきた」という方がおいでます。コルセットは通常、継続して装着する必要があるので、可能な限り着用していただき、外す場合でも、装着しているのと同じような体位を保持しておく必要があります。くれぐれも、コルセットを外して腰を曲げたりして、折角の治癒過程を台無しにしないように御願いしたいと思います。また、骨は動かさなくても、背筋、腹筋、大腰筋などは衰えないようにトレーニングをすることが肝要ですので、重要なリハビリテーションとしてコルセットを着用している場合の運動の指導を受けていただきたいと思います。
  軟性(ソフト)コルセットには、褌(ふんどし)を締めるような効果もあります。こころを落ち着かせ、下半身に力をいれるには腹直筋を緊張させる腹圧を上げる必要がありますが、褌や帯、幅のあるベルト、そして弾力性のあるソフトコルセットは腹直筋を補助して腹圧を上げやすくします。腰痛持ちの方が、コルセットは効果があると感じる原因はこの点にあることが多いのではないかと考えます。



第一画廊
当院では、知人の絵画などの創作を展示しています。お楽しみください。
上 露口敏幸先生 
下 佐野比呂志先生

第二画廊